愛をさがす私のための6つのお話。みっつめ。
【出逢うべきひとを探して輪廻する妄執のお話。】



 彼女は生まれ変わりなんて信じないと言う主義だったけど、僕は生まれ変わりを信じてる。
 人は死ねば大地に還るだけだなんて、そんな残酷な事実はない。
 だってもしそうなら、僕はもう永遠に彼女に会えない。
 何百年も現世にとどまって彷徨っているのは、彼女に会うためなのに。
 彼女は聡明な人だった。物事をはっきり告げて、今的に言えばリアリズムっていうのかな。
 彼女が死ぬとき、その手をとって「来世で会おう」と涙ながらに訴えたら困ったように笑って
「貴方は十分に私を愛してくれた。それだけでいい」と言って息をひきとった。
 それから何十年かして、僕も死んだ。
 それからずっと彼女を探してる。
 一目会えばわかるんだ。
 僕は彼女の魂に惹かれたのだから。
 もう一度、もう一度だけでいいから彼女に会いたい。









 忘れたくなんかない。僕が僕だという証すら消えてしまうじゃないか。









                                   
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