「あ、あいつはどうかしてるんじゃないのか!」
叫んだのはハンズスだった。
仕方ないと思う。オレもそう思ったし。
まるで初めから当たらないのを知っているかのように、セレンは元いた場所で優雅に腰掛けたままグラスを傾けていた。轟音と五月雨のような銃弾が飛ぶ店の中、そこだけ音がしないみたいだ。
「この酒は独特の風味があるな。悪くない」
空になったグラスを名残惜しそうに見る。気に入ったみたいだ。
それから横のヘリを見た。ヘリが機関銃の照準をセレンにあわせる。
セレンが自分に向けられた銃口を見ながら微笑んだ。
それだけ、に見えた。少なくともオレには。
次の瞬間、ヘリが爆発した。
「え!?」
セレンは面白くもなさそうにそれを見ていた。爆風を受けた長い銀髪が夜空に舞う。
炎に巻かれた機体が黒煙を上げながら下へと落ちていく。
地上にヘリが墜落したとき、また一際大きな爆音がして風が唸った。
「あいつ、ついに人間やめやがった」と呟いたのはダルジュだ。
ようやく店内に静けさが戻ってきた。
大きな音ばっかり聞いてたから耳がじんじんする。
「…なんだったんだ…?」
見事なまでに破壊されつくした店内を見てハンズスが呆然とした。テーブルなんて見る影も無い。
店内で唯一無事だったのは、セレンが座ってた椅子くらいだ。あちこちに元料理だったものが飛び散って、皿やガラスの破片が散乱してる。足の踏み場もない。
「今度あれと戦うことにしたのさ」
英雄がなんでもないように言った。
ハンズスが信じられないという目を英雄に向ける。
「皆に協力して欲しいと思ってね」
「なにが協力だ。今回ので立派に一味カウントされたじゃねーか」
ダルジュが威嚇した。
「クレバス、巻き込むの感心しまセン」
アレクがたしなめる。
見上げると、英雄はそれらの声を嬉しそうに微笑んで聞いていた。
英雄が何も言わずにオレの手を握る。
「最後まで、見届けてくれ」
小さく呟かれた言葉は、多分他の誰にも届かなかった。
返事の代わりに手を握り返す。
英雄が初めてほっとしたような笑顔を見せた。
第19話 END