無敵戦隊シャイニンジャー
シャイニンジャー秘密基地で、レッドは求人情報誌を開いていた。
新しいアルバイトを探さなければ、生活もままならない。幸い住居は、もともと基地に住めと言っていた長官が嬉々として用意をしてくれたが、それにいつまでも甘えるわけにはいかないだろう。
基地が秘密なため、住所も秘密、では出来る仕事も限られていた。
「なにしてるんです」
メインルームに現れたブルーが、レッドの読んでいる本を見て眉をひそめた。
「バイト探し。クビになっちゃったから」
「ちょっとは薬になったんじゃないですか。正義感でメシは食えないって」
「うーん」
ブルーの辛辣な言葉に、レッドは頭を掻いた。
「でも、オレらしかできないんじゃ、しょうがないじゃん?」
にこりと笑うレッドに、ブルーの頬がひくりと動いた。
「あなた、馬鹿でしょう?」
ため息をついて、対面に座る。それから、なにか言いにくそうにブルーは視線をそらした。
レッドはそんなブルーの様子に気づかずに、熱心に本にチェックを入れている。
「いやぁ、大漁大漁!笑いが止まらねーや!」
大笑いをしながら、ブラックがメインルームに入って来た。パチンコの景品を山と抱えている。ブラックは、真剣に本をチェックするレッドの様子を見て、後ろから覗き込んだ。
「あれ?なにやってんの、お前」
「バイト探し」
え、だって、と言いかけて、ブラックはブルーを見た。
ブルーが決まり悪そうに咳払いをする。
「なんだ、まだ言ってないのか。そんなん必要ないぜ、レッド。手伝って欲しい店があってな、またラーメン屋」
「え、本当?」
レッドが顔を上げた。
「本当、本当。出動もOKOK!ばりばり働いてガンガン戦ってくれよな」
可可とブラックは愉快そうに大笑いして、レッドの背を叩いた。
「ありがとう!」
「礼はスポンサーに言えよ」
ブラックがブルーを指差す。ブルーは決まり悪そうに、カップを傾けた。
意外そうな顔をしたレッドが、ブルーを見る。
「ありがとう、ブルー」
「…たまたま利害が一致しただけですよ」
今回だけです、とブルーは紅茶を飲んだ。なんだか、ひどく苦い気がした。
都内に新しく出来たラーメン屋の評判は上々だった。
ラーメン屋が開かれる度にチェックするマニアの舌をうならせ、すぐにクチコミで評判が広がって行った。ネットで話題となるも、テレビ・雑誌の出演はNG。その味は、一度食べたらやめられないのだという噂だった。
調理の方法は秘密。調理場はカウンターから見えず、仕切りの鉄板の奥から出来たラーメンだけが出されるという徹底ぶりだ。
噂が噂を呼び、開店前から人々が行列をなしている。その列は、閉店まで絶える事はなかった。
その様子を、店の奥からちらりと見たネオロイザーはブラックの言葉を思い出した。
ブラックは、こう言ったのである。
「あんた、いい味してる。あんたは知らんだろうが、人間ってのはラーメンが好きだ。人間を支配したいなら、自分の味でやらないか?あんた食いたさに、馬鹿共が列を成す。たかがラーメンに2時間待ちだぜ?自分に跪く様を見たくはないか?」
ちなみにブルーはこう言った。
「店舗設計などの初期費用はお出ししましょう。マージンは売り上げの10%でどうです?よくわからなくても構いませんから、契約書にサインを。指紋がなければ、そのナルトで代用してください。3年契約なのでその度に更新をしましょう。その際、諸条件に関して変更することが出来ます」
よくわからないうちにこうなってしまったが良かったんだろうか…。ネオロイザーは空を見てたそがれた。どんぶり型の影が、調理場に伸びていく。
「店長、ラーメン5杯お願いします」
レッドの声がカウンターの向こうから響いた。
『あいよ!』
返事をして、すぐに調理にかかる。
彼には感傷に浸る時間すら許されなかった。
ブルーとブラックは、混雑する店を通りの向こうから眺めていた。
店内できびきびと働くレッドの姿が見える。
「あんな馬鹿な人を見たのは、初めてですよ」
ブルーが疲れきったようなため息をついた。そのままガードレールに腰をかける。
「んー、まあな。器用とは言えねーかな」
ブラックがにやにやと笑いながら言う。
「けど、俺ああいうの嫌いじゃないぜ。ブルーもそうだろ?」
「一緒にされるとは心外ですね。今回のはたまたま利害が一致しただけのことですよ」
「たまたまねぇ…」
試すようなブラックの視線に、ブルーが眉を顰めた。心底面白くなさそうな表情をしてみせる。
「我等がレッドに」
ブラックが缶コーヒーを差し出した。ブルーが受け取る。
缶同士のかちあう音が、車の通りの途切れた合間に響いた。
〔Mission4:終了〕
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