無敵戦隊シャイニンジャー

「宮田主任、どうして!」
「くどいわ!」
 戦闘兵からの攻撃を避けながら、レッドは問いを繰り返した。戦おうとすらしない。宮田の真意がわかるまで、手を上げないとレッドは決めていた。
「きゃあ!」
 悲鳴に振り返る。
「くそ!」
 戦闘兵が、美沙に手を伸ばそうとしているのを見て、レッドは叫んでいた。
「シャイニング・オン!」
 赤の光が辺りを照らす。その輝きに宮田は目を細めた。
 赤の光、シャイニングレッド。
 炎をイメージした赤だ。
 全てを焼き尽くす炎、それを象った光りが一閃し、美沙を抱き上げたまま戦闘兵の間を駆け抜ける。
 変身したレッドは少し離れた場所に美沙を降ろした。
「レ、レッドさん…」
 美沙がレッドを見上げる。
「ここにいて」
 こくりと頷いたレッドが、戦闘兵達に向っていく。
 倒されていく戦闘兵を見ながら、宮田は考えた。
 ブラックも、ブルーも進化を果たした。まだ、レッドだけがしていない。シンクロ率でいけば申し分ないはずなのに、なぜ…?
 そうする間にもレッドは次々に戦闘兵を倒していく。
 出動回数の多さが、レッドを戦闘に慣れさせていた。相手が機械であるせいもあるだろう。繰り出す拳にも、蹴りにも容赦がない。
 戦闘兵の最後の一人が倒される。
「やるやないか」
 不敵に微笑む宮田の前で、レッドは変身を解いた。肩で息をしたまま、真っ直ぐに宮田を見つめる。
「なんで変身を解くんや。まだ、あたしがおるで」
 宮田の言葉に、レッドは口を開いた。
「…できないよ…」
 宮田の眉がぴくりと動く。
「レッドさん…」
 背中が泣いているようだ、と美沙は思った。
 レッドは宮田を慕っていた。仲間として、頼りになる先輩として。
 その宮田が今、目の前にいるのだ。
「オレ、出来ないよ…!」
 耐えかねたようにレッドが叫ぶ。
「アホが!」
 宮田がその首を掴み上げた。壁に叩きつけられ、締め上げられたレッドの口からうめき声が漏れる。
「甘いんや!」
 苦しそうに目を細めたレッドは宮田の腕を外そうと手を伸ばした。外観は変わらず女性なのに、軽々と自分を持ち上げている。ネオロイザーなのだ、本当に。
「…オレは…」
 レッドが呟く。
 その瞳に覚悟のような意思が宿っているのを、宮田は見た。
「オレは…!」
 レッドの腕に力がこもる。
 瞬間、黒の光が2人の間をよぎった。
「ちぃっ」
 感じた熱と痛みに宮田が腕を引く。レッドを抱えたブラックがそこにいた。喉元を押さえ咳き込むレッドの首筋が青黒く変色している。本当に折る気だったのだとブラックは思った。
「マジかよ、姐さん」
 信じられない、という顔をするブラックに対し、宮田は不敵に微笑んだ。
「大マジや」


 シャイニンジャー秘密基地のメインルームでは緊張が走っていた。誰もがモニターに映る映像に釘付けになっている。
「み、宮田主任…」
 ナナが青ざめたまま呟いた。
 長官が指を組みなおす。その横で、ブルーは微動だにせずモニターを見ていた。いつものようにスーツを着、背筋を伸ばし、顔色も何一つ変わってはいない。
 けれど、その表情から心情は読めなかった。
「…どうするんです?」
 ぽつり、と呟くようなブルーの言葉に、長官は組んだ指に力を入れた。
 噛み締める奥歯がぎり、と音を立てた。
「この基地においての彼女の役割は終わっている。…裏切ったというのなら、倒すしかない」
 呻くような長官の言葉に、ブルーの表情が一瞬緩んだ。笑ったのだろうか?
 ひどく寂しげなその顔は、しかし、次の瞬間には元に戻っていた。
「わかりました」
 ブルーがシャイニングブレスを口元に持っていった。脇のボタンを押し、通信を繋ぐ。
「ブラック、レッド、撤収を」
 
 続いて聞こえた言葉にブラックとレッドは動きを止めた。
「なんだって?」
「ブルー!」
 ブラックが聞きとがめ、レッドが叫ぶ。
 それぞれの反応がらしいと思いながら、ブルーは続けた。
「何度も言わせないで下さいよ」
 全く、というその唇が微笑んだ。

「私がやる、と言ったんです」

 言いながら、ブルーはモニターの中の宮田を見据えた。モニター越しの彼女が、少しだけ微笑んだ気がした。


〔Mission20:終了〕

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