無敵戦隊シャイニンジャー

MissionExtra5:「新発売! シャイニンジャーソーセージ」

 ヒーローに付き物といえば、ソーセージ。あこがれのヒーローたちが、コマーシャルの中で誇らしげにソーセージを手に勧めてくる姿を見た人もいるだろう。
 そう、我らがシャイニンジャーにもその機会がきたのである。 

「ソーセージィ!?」
 ブラックのすっとんきょうな声がシャイニンジャー秘密基地全体に響いた。
「そうだ」
 野村長官が、背筋を伸ばしながら答える。
「ちょうど食品会社からオファーがあってな。まぁ良い機会だろうし……」
 言葉なかばで途切れさせた長官の視線をたどったブラックが見たものは、瞳を輝かせるレッドの姿だった。
「レッド……」
「ソーセージかぁ」
 うっとりするような面持ちで、夢を描いているような表情のレッドに、ブラックは冷や汗をかいた。
「なんだお前、ソーセージ好きなのか」
「ううん、そういうわけじゃなくて」
 鼻頭をかいたレッドがはにかむ。
「なんか嬉しいんだ。ヒーローっぽくて」
「それで私たちになにをしろっていうんですか」
 ソファーで黙って話を聞いていたブルーが眉をひそめる。
「CMでしたらお断りですよ」
 とりつくしまもなさそうなブルーの態度に、長官は嘆息した。
「そうではない。お前たちの知恵を借りたいのは、おまけのことだ」
「おまけ……?」
 レッドが小首を傾げる。
「そうだ」
 長官が重々しくうなずいた。
「全国の子供たちの夢を壊さないようなものを頼むぞ」
「おまけねぇ」
 うーんとうなりながら、ブラックが顎に手をやった。身をひねり考え込む姿は、真剣そのものだ。
 しばらく思案した彼は、突然指を鳴らした。
「こいつは名案! 売り上げ倍増っすよ」
「なんだ。言ってみろ」
「オペレーターのセクシーポスター! お色気満点で、オヤジの心もつかめますぜ」
「話を聞いていなかったのか? 子供の夢を壊すなと……」
「大人の夢も大事です!」
 力説したブラックは机をたたいた。
「貴様……」
 めまいを感じた長官が、よろけながらもブラックを睨む。途端にオペレーターが叫んだ。
「ネオロイザー反応あり! 座標56.42.260.81! モニターに出ます」
 声が終わるや否や、メインモニターにその姿が映し出される。
 場所はどこかの商店街のようだった。逃げ惑う人々が映し出され、その奥に戦闘兵、そしてネオロイザーの姿が見受けられた。
 すらりとした肢体をしている。長身といっていい。頭にかぶったウェスタンハット、首に巻いたスカーフは赤く、腰から銃を下げている。手足は棒のように長く、ボディーはこんがりと焼けていた。
「……ソーセージだ……」
 レッドがポカンとした表情でモニターを見やる。モニター中では、カッコつけたソーセージの姿を模したネオロイザーが出ていた。
「どちらかというとフランクフルトですね」
 さしておもしろくもないような表情でブルーが告げた。
「タイムリーだな」
 ブラックがぼりぼりと頭をかく。それにあわせるようにブルーが立ち上がった。
「行ってくれるか」
 長官の言葉を合図に、シャイニンジャー達はネオロイザーのもとへ駆けていった。

 移動の最中、ネクタイをゆるめながらブルーが口を開いた。
「さっきの話ですが」
「ソーセージ?」
 レットが意外そうな顔をしてブルーを見やる。
「おまけもさることながら、気になるのは原材料ですね。最近ではとかく食品の安全が叫ばれがちですが、そのあたりどうフォローするんでしょうか」
「あー、保存料とか着色料とかかぁ」
 ブラックが間延びした声で答えた。
「ま、あの長官のことだからうまくやるんじゃね?」
「それはそうですが……」
「ついたぞ!」
 レッドの叫びに二人が前を向く。開けた世界の前に、やはりこんがりと焼けたソーセージタイプのネオロイザーが立っていた。
『シャイニンジャーか!』
 三人を認めるなり、ネオロイザーは身構えた。
 辺りから、戦闘員達が湧き出てくる。
 レッドが拳を掲げた。
「シャイニング・オン!」
 レッドの叫びにブラック・ブルーも続く。まばゆい光が辺りを包んだ。
「お前たちの好きはさせない!」
 啖呵をきるレッドを横目で見ながら、ブルーはこれで材料費が浮いたなと考えていたという。

 かくして紆余曲折を経て発売にこぎつけたシャイニンジャーソーセージは、子供達の間で大人気だった。
 おまけは紙でつくるシャイニングロボ。
 レッド、ブルー、ブラック、それぞれが乗る機体が作れるのだ。三体そろえば、ロボに合体することもできる。
「コツは、一箱につき一体というところです。最低でも三体そろえねば、ロボにはなれません。本来なら、どの箱に何がはいっているかは非表示にすべきのですが……」
 咳払いをしたブルーが、レッドを見やった。
「だって、同じの出たらかわいそうだよ」
「だそうだ」
 ブラックが、可可と笑いとばした。
「まあよかろう。斎藤寝具の協力で、材料費はずいぶん安くすんだことだし。しかし寝具会社がソーセージの原材料を持っているとはどういうことだ」
 長官の疑問をブルーが一笑に付した。
「企業秘密ですよ」
 当然といわんばかりのブルーの言葉に、長官はそれ以上追及することがなかった。

 チビッコに大人気!シャイニンジャーソーセージ!
 合成着色料、保存料不使用!
 他の材料は秘密だぜ!

 ※ごく稀に、お子様が急にたくましくなるケースがありますが、ほほえましいことと見守ってください。

【無敵戦隊シャイニンジャー:新発売! シャイニンジャーソーセージ・完】
2006.9.11-13
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